流通化

かねてより構想していた「流通論」の骨子をまとめる。流通は交通の延長ではない。流通の正体のなかに近代の姿が隠されている。ボードリヤールも指摘しているとおり、商品の価値は二重化されている。商品自体の価値と社会というコンテキストのなかに組みこまれた社会的価値である。経済が成立するのはこの社会的価値基盤の上にである。流通は不思議な特徴を持っている。なにしろ商品の流通が拡大すればするほど、その商品の価値は磨り減っていく。また流通の拡大はエントロピー増大の旅でもある。ひろがるところまでひろがって、商品の価値がゼロになる平衡状態に向かっていく。だが、この「流通」そのものの意味がいままでほとんど考えられてこなかった。社会学の一本の骨にでもしつらえようと思ったわけダ。