ソーシャル・リフレクタ

今日、ウェブ・アーカイブの調査研究プロジェクトの一環で、東大・生産技術研究所喜連川教授を訪ねる。一般に公開しているものではないが、すでに大学で「ウェブ・アーカイブ」を実施している。ペタ・バイトのストレージが用意され、「日本」をアーカイブしていく。


喜連川教授との話のなかで印象的だったのが「アーカイブは社会のリフレクタ」という一言。この視点が足りない。誰もが、「すべて寸分違わずコピー、保存してはじめてアーカイブの価値が生れる」と思い込みすぎ。


喜連川教授は「社会のリフレクタ」を充実させるために「テキスト」を充実させる。クロールで収集されたウェブ・ページは次に「テキスト」として抽出され、そして保存される。


それが有効に働いている例をひとつ。お茶の水女子大学ジェンダー研究センターの舘かおる教授は、社会のなかのジェンダーの意識がどのように変わってきたのかを調査するために、喜連川教授のもとで運用されているウェブ・アーカイブから「ジェンダー」の関連のキーワードを中心に抜き出した。すると、いままで感覚的に「ジェンダー意識」がひろまっているという実感を裏付けるように、利用されるテキストも膨らんでいることが実証された。これは、社会のリフレクタとしてのウェブ・アーカイブを利用した好例。


テキスト中心にすると、なにやら大事な情報を削ぎ落として情報から正確さが失われてしまっているような気がするが、そんなことはない。テキストはなによりも人が直に利用する言葉であり、これほど人のこころを反映するものはない。むしろテキストにこだわることで社会のリフレクタとしての役割を充実させているとも言える。


そう、インターネットのなかに溢れるばかりに書きこまれている言葉の海を、どのように泳ぐかが問題なのだ。