神話的思考と現実的思考

ヒトの心のなかには神話的思考と現実的思考が同居している。現実的思考は、コップをもったり、御飯の支度をしたりと日常的な「所作」にかかわる部分に連なる。また神話的思考は、花に母の顔を思い浮かべたり、神前で手をあわせたり、森の中で神の化身の鳥に出会ったりする。神話的思考は世界との連なりをもたらす。現実的思考は、近代化のなかで科学技術により途方も無く拡大され、もはや科学的思考といってもよい。近代はこのふたつの軸のバランスが極端に悪い時代である。ニーチェは「神は死んだ」と言ったが、あまりに明るい科学の光のまえに、おもわず神の所在を忘れてしまったのダロウ。このふたつの軸をめぐる旅は中沢新一の『カイエ・ソバージュ』のシリーズが小気味よい。