森のなか

日本は森の国。そこかしこに豊穣な霊(ヒ)が満ちている。「中心」がいくつもある。「ひとつ」ではない。そしてこの「中心」はじっとしていない。いつも微かに震えるように動き回っている。日本はそんな森の動向をこそとらえようとしてきた。そこにあったはずの「中心」、ヒがふいに動いてしまうとそこはウツになる。ヒの気配はそのままに、またふいにヒが飛びだしてきそうな穴が空いている。森のなかでヒを追っていくと、それがウツロヒになる。ウツとウツロヒを往来している場所がウツツ(現)になる。