ホモ・サピエンスの自覚

ホモ・サピエンスの自覚はいったいいつにはじまるのか。おそらくルネサンスのころは半自覚である。半分自然・半分人間のいわば半神半人だった。だが蒸気機関車が走ると、瞬く間にホモ・サピエンスの自覚がひろまる。「機械」はこの世のものではなかった。衣装を第二の皮膚、家を第三の皮膚、機械を第四の皮膚として自然から自身を切り離す。ホモ・サピエンスの萌芽である。そして飛行機で地球を自然から半自然へと連れていき、月面着陸で地球の出を眺めて地球も自然から切り離す。これは根拠ではなく、自覚にすぎないが。

科学の歴史はホモ・サピエンスの自覚の短い歴史でもある。