『全然都市』のはじまりはじまり

写真から都市を小説として再構成する試み。構想は去年の暮れから。スタートアップの写真がストックされたのではじまりと相成りまする。安部公房へのオマージュでもある。

およそ都市が都市として描かれるのは、エドガー・アラン・ポーあたりから。名前のない群集がうごめく都市の秘密を暴いていくスタイル。これは背後に現実の都市感を想定しているわけだが、写真という現実の断片に仮構の言葉を重ねていくことで都市を再構成できるのではと思い立った。ほとんどが携帯電話のカメラで撮られているというのも都市にふさわしい。

安部公房はとびきりの都市小説家だった。都市を自身の在り処にすえていた。そう、写真狂でも機械狂でもあった。そんな安部公房を学生の時分追いかけ、渋谷の山手教会の地下に組織された安部スタジオによく通ったものだった。そこは窓ひとつない極上の密室で、夜な夜な都市の物語が編まれていた。

そろそろ自分のなかから安部公房を放つ時期が近づいている。

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