瑛九とモダニズム

瑛九(1911年〜1960年)は現代のピクチャレスクを駆けぬけた。


油絵から美術評論、写真からフォト・デッサン(マン・レイのフォトグラムの瑛九版)、エスペラントの小説から共産党、大量のリトグラフからエッチングまで。だが、そのどれもがその真中にむかうのではなく、端に端に向かい続けた。瑛九はおよそピクチャレスクの淵を歩き続けた。そんなエッジ感覚が瑛九にある。瑛九にとってモダニズムとはエッジを走り続けることだった。そんなエキセントリックな動向の只中をこそ疾走していた。

なにものにもなりきれない感覚は坂口安吾にも似ている。


瑛九が書いたはじめてのエスペラント語の手紙には

Skribu simple kiel knabo.
肝に銘じながら未だ達せず

とあった。