風土

風土という言葉で空間に迫れるほど、人と風は切り離せない。和辻哲郎の風土も、鈴木秀夫の風土もオギュスタン・ベルクの風土もこの「風の感覚」にはじまる。柳田国男の『風位考』にはじまり関口武の『風の辞典』に連なる風収集によれば、日本にはおよそ2145の名前の風が吹きめぐっている。タマオロシと呼ばれる風は死者の魂があつまって吹いていると考えられた。タマオロシに吹かれると、船ごと連れ去られると漁師たちは案じた。おそらく日本という国が骨のように縦断する山と海にはさまれた形であり、そこにある複雑な地形は多様な風と多様な文化をもたらした。ライアル・ワトソンは地球をめぐる風を「風の博物誌」にまとめたが、とりわけ日本は風の豊かな国である。日本は国家より風土が似合う。