バーチャル・リアリティの遠近

また、VRは研究者が意識しないうちに近代的(西洋的?)遠近法がCGとともに用いられる。だが、およそ人が脳のなかで正確に線形遠近法を利用してるとは思えない。おそらくは山水画の三遠(高遠:山の下から山頂をあおぐ、深遠:山の谷間から後方をうかがう、平遠:近山から遠山を望見する)のように「大雑把な」距離の関係性をもちこんで事物・事態を配置する。この配置によって関係に「意味」が生まれてくる。線形遠近法のなかに正確に事物・事態を配置しても、このような編集的契機は生まれにくい。配置の自由度、配置の妙がはいりこめないからである。